「本当にやりたいこと」にOKを出す ・2

 

「本当はこれをしたい自分」と、
様々な理由を言って押さえつけようとする「ダメ出しする自分」。
誰もが、このせめぎ合いと葛藤の中から何かを見出して、
人生というのは前に進んでいくのかもしれません。

前回の記事→本当にやりたいことにOKを出す・1

先日ミュージックセラピーのセッションにいらしたKさんも、そんなお一人です。
ご本人のご了解を得てご紹介させていただきます。

Energie

■「本当の気持ち」が呼びかけるのを聴く

Kさんは、アーティスティックな雰囲気のある50代の女性で、
色々な経歴を持つ多才な方です。
数年前までは自営で花に関わるお仕事をして
楽しく充実した日々を過ごしておられたそうですが、
ある時から、事情によりお花の世界から遠ざかり
人の心身をサポートするセラピストとして活動するようになりました。

しかしこの数年間、どんどんやる気とエネルギーが落ちていって、
鬱々とした日々が続いているような気がすると言います。

好きで納得しているはずのセラピーの世界に、
どこか情熱を燃やしきれないもどかしさ。
「いったいこれは何なのだろう?」と向き合わざるを得ない時期が、
ここしばらく続いていたようです。

Kさんはセッションにいらした時、
「セラピーの世界も好き。けれど一番好きなのはお花だったことに気がついた。」
と言われました。
不思議なようですが、意外と私たちは
自分の本当の気持ちに気づけないことがあるものです。
色々な理由で「それでいい。これでいい。」と、
その時は本当にそう思っている場合があるのです。
Kさんは、やっと本当の気持ちをみつけることができるところまで、
ご自身に向き合ってこられたのだと思います。

数年前までお花に関わっていた時のKさんは、
本当に充実して活き活きとしていたそうです。
それなのに今は、自分でももどかしいくらいエネルギーが停滞している・・・。
しかし、それに気がついたとはいえ、
じゃあどうするのか、ということになると答えが見えない。
再びお花の世界に戻ろうとしても、現実的な制約を考えると無理だと思う。
でも、このまま少しの安定と引き換えに、鬱々とした生活を続けるのはもう嫌。
なんとかしたい。でも・・・・
というモヤモヤした気持ちをお話しくださいました。

■音楽は人の「本当の音色=ほんね」を語る

私が行うミュージックセラピーは、
ご本人の中のさまざまな心模様を、ご本人と私とで楽器を鳴らしながら
即興で音に表してみるということをします。
つまり、感じるままの即興演奏です。

私のスタジオには、ピアノの他、ベルや太鼓や鈴、木琴など、
誰でも簡単に音を出せる、そして色々なイメージにあった様々な音がする楽器を
用意してあるので、音楽技術など関係なく、どなたでも簡単に、
ご自分のイメージを音で表現することができます。

音や音楽・・・特に即興演奏というのは、潜在意識とダイレクトにつながります。
潜在意識というのは、本人も普段気がついていないような奥深い
理屈や言い訳の生まれる以前の心の状態のようなものです。
そんな潜在意識にある色々な思いが、楽器を通して音となって現れる・・・・
それは「本音(ほんね)」=その方の本当の音色 です。

そうやって、思うまま、体の動くままに音を出してみると、
音自身が語っている自分の「本音・本心」に、自分自身が気づいて
びっくりすることがあります。
それだけで、深く腑に落ちることがあったり、
その方自身が自分にとって最善の答えを見つけてゆかれることが多々あります。

そのような即興演奏を、どんな風にやってみるか。
その枠組みを提案し、演奏でサポートするのが私の役目です。
Kさんのお話を伺いながら私は、こんなストーリーの即興を思いつきました。

■大筋だけ決めて、あとは音に任せる

「まずは、Kさんが現在感じておられる、
エネルギーの落ちた、鬱々としたその感じをやってみましょう。
そして、もううんざりだ!っていうくらい、十分にそれをやったら、
転換のきっかけの音を出しましょう。
そのきっかけの音を聴いたら今度は、
Kさんがお花に関わっている時の最高にハッピーな感じをやりましょう。」

これをやったらどうなるのか、何がわかるのか?
それは私にも予想できません。
何か意図した答えがあるのか。狙いは、目的は?
ありません。
なぜそういうストーリーをやるのか、その根拠は?
その時の直感です。若干の経験則はあると言えます。

ある意味でそれは実験なのです。

「それをやってみたら何が起こるでしょう。」というのは、
身体感覚をベースにした「ハコミ・セラピー」でよく行うアプローチです。

セラピスト自身が何かを意図しない、狙わないこと。
徹底的にその方のプロセスを信頼して任せること。
そうすればご相談者自身が、最善の道を示してくれる。
それこそが最善の結果をもたらすもの・・・
そういうスタンスがベースになっています。

そういうわけで、
今の鬱々とした状態 → 転換の合図 → お花に触れている時のハッピーな状態

という構成の枠組みだけを決めて、音を出していきます。
あとは思いつくまま、何の楽器を使っても構わないのです。
私はピアノでサポートすることにしました。

そして転換の音としては、シャラララ〜〜と流れるように金属が響く
「ツリーチャイム」を希望されたので、
それを転換の音として、タイミングを見て私がそれを鳴らすことになりました。

それだけ決めて、私たちは演奏に入りました。

次回に続く

 
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即興音楽療法の諸理論〈上〉
ケネス・E. ブルーシア
人間と歴史社

この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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