怒りの感情を持つのは悪ではない・「怒り」とどうつきあうか1

 Fire kick

怒りの感情はやっかいなもの

人間の感情の中でも、私たちにとって一番やっかいなものは、
怒りの感情かもしれません。

つい怒ってしまう、ムカッときてしまう、イラッときてしまう。

つい怒鳴ってしまう、キツイ言葉をぶつけてしまう。
ダーン!とかバーン!とかやって
モノに当たってしまう。

いけないと思っているのに。
そんなつもりじゃないはずなのに・・・・。

そして、やってしまってから
そんな自分が嫌になって、
こんどはどお〜んと落ち込んで・・・・
「あー、こんな自分はヤダヤダ!ダメダメ!」

・・・・なーんて、ね。
いやはや、やっかいですね。

だから、多くの人は
「感情をコントロールしなければ!」って思うのですね。

「怒りを出しちゃダメだ! 」
「そもそも怒らないようにならないと!」
「でも、怒っちゃう。
 うーむ、まだまだ自分は未熟・・・こんどこそは!」

そんな終わりなき「コントロールの闘い」をしていたりしませんでしょうか。

でもね。ちょっと考えてみましょう。

「感情のコントロール」とは
「怒りを出さないようにすること」
「怒りを感じないようになること」なんだろうか?

実はそうではないのです。

出さないように、感じないようにするのは、
ホントはあるのに、とりあえず奥の押し入れに押し込んで
ないことにしちゃうようなものです。

ほんとはあるのに、ないことにしちゃうのは
心理学的には「抑圧」といって
あまり健全な状態とはいえないのです。

押し入れの中にはパンパンに詰まった感情が、
知らないうちにどんどん溜まって、
発酵し続けているはず。

ないことにしたつもりのそれらが、
わけのわからないムカムカ、ドロドロとなって
心の奥で疼いていたりするものです。

それが心身ともに色々な不調となって現れたり
想定外の暴発をしたりします。

じゃあ、どうすればいいか。
怒りの感情とどうつきあえばよいのでしょうか。

いくつかの考え方を思いつきますので
これから数回にわたって
少しずつ書いてみようかと思います。

あくまでも一つの考え方であり、一つの切り口。
それを選択採用するかどうかは、それぞれにおまかせします。

今日ご提案する考え方は、まずこれ。

怒りの感情を持つのは、悪ではない。

ということです。

「怒る自分が悪い」がものごとややこしくさせる

多くの方は、自分が怒りの感情を持ったことに対して

「そんなふうに感じちゃいけない」
「怒るのはいけないことだ」
「そんなことで怒る自分は最低だ」

などと思って、
怒りの感情を持った自分を「悪」として判断しているようです。

怒り=悪

こう思っているから
怒ってしまった自分が「悪」ということになり、
自分が「悪」になってしまうということに
イヤ〜な気分を感じるのではないでしょうか。

自分が悪い、自分が間違っている

そう感じた時、
人はとーっても嫌な気分になって、苦しくなるのです。

だからこそ、そう感じるのが嫌だから

「自分は悪くない!悪いのはあっちでしょ!」
「自分は正しい!間違っているのはあっちでしょ!」

と攻撃したくなるのです。
そう考え出すとますます嫌な気分は燃え広がります。

だからこそ、自分が悪いのではなく、
あっちが悪くて間違っていることを証明するために

「だってあの人ったら、こうでああで、こんなであんなで・・・」

と、あっちが悪くて当然な理由、そして
自分が怒っても当然な理由、
自分が怒っても悪くない理由が
次から次へと頭を駆けめぐることになるのです。

これやってると、ますます怒りの火の手は廻りますね。

でも、ちょっと待って。

自分が怒っても当然な理由、
自分が怒っても悪くない理由を
そんなに必死になって列挙しなきゃいけないのは、
他ならぬ自分が、
「怒るのは悪い」と思っているからであり
自分が悪いと感じるのが嫌で嫌でたまらないからです。

だから、自分が悪くない理由をいっぱい並べて
相手を悪いことにして
結果としてますます怒りをつのらせることになります。
結果としてとーっても嫌な気分です。

なんかヘンだね??

では
「怒りという感情を持つこと自体、別に悪くない」
思えるとしたらどうでしょうか。

「ああ、今わたし、あの人に怒ってるんだな」
と、一歩距離を置いて少し冷静に
受け止めることができるのではないでしょうか。

それ以上エキサイトすることもなく
「今、怒りという感情がある自分」というところに
留まることができるのではないでしょうか。

それが
本当の意味で「感情をコントロールする」
の第一歩です。

そういう感情を、そのまま認める。
そういう感情を持った自分を、そのまま認める。
ということです。

「認める」とは
「あるなー」と観察し
あることを確認するだけのことです。

なぜ、そんなにあっさり観察・確認できるか。

べつにあってもいいからです。

これができると、もう
怒りの火の手は静まり、
加速する車輪は止まり、
感情に呑まれる状態から脱出しています。

その怒りをじゃあどうするかは、それからのこととして、
とりあえず
どうにもならない破壊的な衝動からは
離れることができるでしょう。

怒りを感じた自分を受け止めてあげる

そもそも
怒りという感情は悪くない
と考えた方が、何かと楽になります。

人間には感情というものがあり、
怒りも、あらゆる感情の中の一つにすぎません。
どの感情が善くてどの感情が悪い、ということはありません。
感情とは、色々なエネルギー状態にすぎないものであり
自分の中に起きている「現象」のようなものです。

そして怒りの感情は、根源的には
生きるための純粋なエネルギーとつながっています。
自分を守るため、自分という命を生かすための強さや
現状に違和感を感じ、ものごとを変革する力にもなり得るもの。
その性質自体に善悪はないのです。

ただ、ものごとは現れようと使いよう。
人間のエゴが混ざると、
どうしても破壊的な方に傾きがちなのは確かでしょう。

怒りの感情はエネルギーが強いので
そのまま出すと周りの人や物事に悪影響を与えることにもなります。
だから出し方には注意しなければいけません。
怒りをそのまま出すことは控えた方がいい場合もたくさんあります。

しかし、出すことを控えることと
感じることを禁止することは全然違います。

自分自身に対して、感じることを禁止することが、
ややこしいねじれや歪みを生むのです。

まずは怒りを感じた自分を、そのまま受け止めてあげましょう。

「そうか、怒ってるんだね。」

だって、怒ってるもんは怒ってるんだもの。
しょうがないじゃん、ね。
あーわかったわかった、怒ってるんだよね。
いいよ。
怒った怒った。腹たつねーー。

そうやって受け止めてあげるもう一人の自分を登場させてください。
それだけでだいぶ違います。

結果として、
バーン!と外に出す前にストップがかかるでしょう。

そんなふうに受け止めたらダメになるんじゃないかって?
そんなに甘やかしていいのかって?
大丈夫。
感情って意外と単純だから
わかってもらえたと思ったら、とりあえず少し落ち着くものなんです。

そもそも、怒りを感じた自分に対して
「そんな自分はダメだ!!」ってやるから
ますます不愉快が燃え上がるのです。

まずは怒りの感情を認めて
怒りを持った自分を受け止めてあげると
ちょっと気が楽になります。
少し気が楽になったら、自然と
冷静な考えや判断が戻ってきたりするものです。

じゃあどうする?
ってそれから考えればいいのです。

そういうわけで、まずは

・怒りの感情は悪くない
・怒りの感情を認める
  →「あるなー」

・怒りの感情を持った自分を、そのまま受け止める
  →「そうか、怒ってるんだね」

そんな考え方を提案します。

次につづく→

この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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