深い悲しみは志に変容する

Day and night tree

今日は少しプライベートな日記です。

ある日一本の大木が

先週、とっても悲しいことがありました。

私はふだん、そんなに感情の起伏が激しくないせいか、
あるいは、たいして問題やストレスがない生活を送っているせいか
ここまで悲しいと感じたことって、ほんとに何年ぶりだろうと思うくらい
悲しいことでした。

それは、一本の大木が切り倒されたこと。

今年の5月に引っ越してきた、今のスタジオのベランダの外には
名前のわからない大きな樹が、豊かな緑の景色を作っていました。

その樹は隣のマンションの敷地にあるのですが、
ウチの3階のベランダにちょうどよくかかり、
かといって日当たりをさえぎるでもない絶妙な高さに収まっていました。

目には緑、耳からは葉ずれの音、枝を揺らす風のざわめき。
そして鳥たちが遊びに来て
六本木の真ん中とは思えないような自然環境を作ってくれていました。

それが、ある日の朝突然、チェーンソーの音とともに
終わりを告げられることになったのです。

詳しい経緯は省きますが、かいつまむと、
あまりにも枝が伸びすぎて周辺のマンションからクレームが来たため
剪定が必要、と。

しかし、剪定だけだとまたいずれ伸びて、
何年かに一度は必ず作業が必要になるので、
お金と手間がかかる、と。

ではもう根本から切って撤去しましょう、と。

ということが、敷地の当事者である隣のマンションの理事会で決まったのだそうです。

えーーっ、樹齢何十年の樹を!?
剪定すれば済むところを!?
カネがかかるから根こそぎ撤去!?

しかし、隣のマンションの住民にすぎず
しかも賃貸にすぎない我々がいくら反対しても嘆いても
どうにもならないことでした。

そしてその日のうちに、樹は跡形もなくなってしまいました。

ほんとに悲しかった。
涙が出て涙が出てしょうがなかった。
なんでこんなに泣けるかと自分でも思うくらい、泣けてしょうがなかった。
外出先でも、思い出してはまた涙。

窓の外に緑がなくなってしまうというそのことも確かに悲しいけど
それ以上に、
この土地に根付いて何十年もここに居続けた大木の命が
こんなつまらない理由で終わりにさせられることが
悲しくて悲しくてしょうがなかった。

何か新しい建物を建てるから、といった物理的な理由ではなく。
「手入れにお金がかかるから」
「クレームがくるから」
早い話がようするに
「金かかってめんどくさいから切っちまえ」という
そういう理由で存在を消滅させられてしまうことに
腹が立ってしょうがなかった。
それでまた涙が出てしかたなかった。

樹がなくなったあとの窓の外には
むき出しに立っている近隣のマンションと
少し面積が広がった青空と
妙にポカッと空いた空間がある。

なんかわからないけど
私の心はものすごく傷ついたみたいです。

人間関係とか仕事関係とか、そういうことで
ここまで傷つくことはここ数年なかったのに
なんでこんなことで、こんなに傷ついてるんだろう。
自分でもよくわからないけど。

「たかが木じゃないの」って思われるかもしれません。
そうなの。たかが木なんだけど。

私はいったいなんでこんなに、この樹にこだわってるんだろう。
この樹にいったい自分は何を投影してるんだろう。
「樹は切られるべきではなかった。それは本当ですか?」(バイロン・ケイティワーク)

なんて、色んな心理的な考察を向けてみたりするけど
わからんわ、とにかく悲しいもんは悲しいんだーっ、と。
だってそうなんだもーーん! と。
ぜんぜんスペースなんか開きゃーしない私もまたありか、と受け止めている次第(笑)。

でも、とにかくわかることは
それだけ私はこの樹を愛していたんだということ。
ほんとに大好きだったんだということ。
ここまでとは気づいていなかったけど。
どうやらとても深く愛していたようです。

5月からのたった半年間だったけど
たくさんたくさん安らぎと恵みをもらっていた。

それだけ感謝をしていたんだということ。

それははっきりとわかりました。

だから、あふれるくらい切ない気持ちとともに
言える言葉は「ありがとう」しかない。

そして、悲しみと
悲しみの奥にある憤りは
深いところで純化されると
強い志という姿に生まれ変わるんだなあ、と知りました。

「だからこそ」の切実な動機が未来を志す

たとえば、こんな話を聞くでしょう。

銃で我が子の命を奪われた親御さんが
悲しみを乗り越えて
だからこそ切実な思いで
この社会から銃をなくすための活動に全力を尽くしていくとか。

何かの事故を経験して大切な誰かを失った人が、
悲しみを乗り越えて
だからこそ切実な思いで
二度と事故を起こさない安全な方法やシステムを生み出していくとか。

深い悲しみは、そうやって強い志へと変容していくことがあります。
「だからこそ」の力。
そこには、その悲しみを味わわざるを得なかった
その人だけの必然があります。

命がこもった、切れば血の出るような切実な動機。
そこから未来に立ち上がる意志。

きわめて個人的な悲しみが、心深くで変容して
やがて多くの人たちや社会、世界の方を向いた
きわめて普遍的な志へと昇華していく。

それは人間の心が持つ
強く美しい一つのしくみかもしれません。

そして、今回
私の中にもそういうものが宿ったような気がします。

志。
ある意味、闘志。

これから自分がやっていくことへの
深い動機付け。

細かい説明はしませんが、直感でもう、コレ。
唐突で意味わかんないかもしれないけど、
てきとうにスルーしてね。

私は人間の煩悩粉砕のために闘う!

そう思っちゃった。

煩悩というのは、べつに難しいことでも現実離れしたものでもなく
言ってみれば
つまんない、アホくさい、勘違いのことです。
縛られているのに、自分じゃ全然気づかない、勘違いのことです。

私流にいえば「ビリーフ」とそれによって構築されている心の回路。
そしてそこから生み出すアホくさい考えと行動の集大成のようなものです。

あえてアホくさいと言っちゃうけれども。

アホくさいんだけど、真剣に信じていて
そうとしか思えなくて
自分で苦しんで、自分で生きにくくしてる
そして他人のことも苦しくさせている
盛大な勘違いのことです。

残念な現実を生み出す、製造元のようなものです。

私の解釈では、そういうものを煩悩といいます。

この煩悩によって日々いかに
残念な現実が多量に製造され
いろんなものが破壊され
いろんな人が不自由に苦しみ
自分も他人も世界もつまらなく悲しくさせているか。

これはおそろしいことです。
その膨大さたるや圧倒的で、目の前がクラクラします。

でも、そういうことにものすごい残念さを感じてしまう私だからこそ
私はやっぱり立ち向かおうと思っちゃう。

このような人間の煩悩を少しでも粉砕する役割をしようって思ってしまうんです。
そのための仕組みをなんとかしたいと考えてしまうんです。

めちゃくちゃ微々たる闘いですけどね。

私が何かしたって
大海の一滴、砂漠の砂の一粒にすぎないのは承知。

でも確実に今現在、
目の前に出会っている方の勘違い(煩悩)を解くお仕事を
日々してるわけですから。
そして、勘違い(煩悩)を見抜くための理論とマニュアルを構築しているわけですから。

それによって1枚、2枚と、
勘違い(煩悩)を脱ぎ捨てている方々が実際いるわけですから。
もうすでにやっていることなのです。
まったくの無駄骨ではないはず・・・と思います。

なのであえて腰を据え直し、やるぞ!と。

この樹のおかげで
そんな志を新たにさせてもらったし
その他にもこの樹から
いろんなものをもらい、受け取りました。

この樹が投げ出してくれた命を
こんなにこの樹を愛していた私が、
ちゃんと受け取って生かそうと思いました。

形はもうなくなってしまったけれど
命は私の中にもらって生きようと思いました。

私の中で、その枝と葉を天に向かって
もっともっと伸ばしていってあげようと思いました。

bigtree 2

この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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