精神的自立の鍵は「がっかり」すること【第三反抗期説】その2

 

前回の記事では、人間の成長発達段階としての「反抗期」について

特に、成人以降に起こることがある「第三反抗期」の概念について書いてみた。

未読の方は、ぜひこちらから読んでほしい。

前回の記事はこちら

 

第三反抗期の重要な意味は、真の「精神的自立」。

すなわち次のようなプロセスを必ず踏んで、精神的自立を獲得していく。

 

1.これまで無自覚に受け入れ同一化していた「親の価値観」に違和感を感じ始める

2.これまで正しく強大で「上」の存在だと信じてきた親という存在に、間違いや矛盾や横暴や未熟や弱さがあったことを直視し、一旦ガッカリする

3.親とは違う自分独自の感性を信頼できるようになり、適切な距離をとって自分の価値観を再選択し、自分の人生を創造していく

このプロセスを私は「第三反抗期」と名付けてみたのである。

ここまでが前回のまとめ。

今、日本に起こっていること

 

さて、この数年間、世界的疾病騒ぎに全国民を挙げて巻き込まれる中

こんな状況だからこそ、一人一人がどういう精神状態で生きているのか?ということが、如実に現れるようになった。

大雑把だが、あえて2つに分けるなら

A.
政府・マスコミ・大企業が流す情報をそのまま信じて、指示されることに忠実に行動する人


B.
政府・マスコミ・大企業が流す情報の矛盾や論理破綻を見抜き、適度に距離をおいて別の判断軸で独自の行動をする人

という2種類であると言える。

このA層とB層の人々は、残念ながら話が合うことはほとんどない。

お互いにとっての「正しさ(価値観)」の軸が違うからだ。

「親がわり」を信じている人

ここで気がついてほしいことは

A層の特徴は、「政府・マスコミ・大企業」を 正しく強大で「上」の存在  として、さらには、私たちに良くしてくれるはずの存在として漠然と信じているということだ。

正しく間違いなく、そして強く確実で、私たちに良きように考え、守ってくれる存在。

そういう信頼があるからこそ、次はコレ!こんどはソレ!という、さんざん人を振り回すようなアナウンスにも忠実についてきて、「そちらがそう言うなら」と従っていくのだ。

そして、そのように「大きな全体」に対して聞き分けがよく協力的であることに、喜びや誇りさえ感じて安心していく。

この精神構造は何なのかというと、「第三反抗期以前」なのである。

いわば、親の価値観との無自覚な蜜月時代。

 

さきほどの「政府・マスコミ・大企業」というところを、そのまま「親」に置き換えればおのずとわかる。

前回の記事に書いた「第三反抗期以前」の特徴はこちら

・親が自分よりも正しく強大で「上」の存在だと思っている

・親が正しいと言っていたこと(価値観)をそのまま信じて従っている

・親の価値観に合わせて従うことで、親が喜ぶ、自分が褒められる、というところに感情的な報酬(安心・満足)と、生存の安全(居場所の安定)を得ている

 

人間の精神において、ミクロで起こっていることはマクロでも当てはまる。

つまり、親の価値観を無自覚に信じたまま自分を委ねて生きる、という生き方は、そのまま

「上」の価値観を無自覚に信じたまま自分を委ねて生きる、という生き方に転写されるのだ。

「上」というのを、さらに「世間」「みんな」「人」と言い換えてもよい。

そうすればあの家において安全に生きていけたように

そうすればこの国において安全に生きていける。

無意識レベルではそういう法則を採用している。

それが、今目の前に現れている圧倒的な「A層」の姿であるといえる。

 

私の個人的な感覚としては

ああ世の中にはこんなにも、親の価値観を信じたまま、それに疑問を持つということもなく生きてきた人たちがこんなに多いのだなあ!

そしてそれを「親孝行」であり「常識」であると思っている人たちがこんなに多いのだなあ!

という感嘆!である。

第三反抗期を通った人

逆に「B層」、つまり

政府・マスコミ・大企業が流す情報の矛盾や論理破綻を見抜き、適度に距離をおいて別の判断軸で独自の行動をする人

このような人たちは、おそらく元々自分の感性を信頼して生きてこられたか、あるいは

人生のどこか一時期に、親の価値観と自分の感性とをすり合わせて検討し、意思的に再選択をするという経験をした人たちではなかろうかと思う。

つまりそれが「第三反抗期」を通った人、ということだ。

真の精神的な自立を導く「第三反抗期」の特徴は何か?
それは

いっぺん親にがっかりすること

であったことを思い出してほしい。

がっかりする力

これまで絶対的に正しいと信じてきた親の理屈や行動やふるまいが

実はかなりの矛盾・論理破綻・理不尽・嘘・ご都合・未熟・弱さ・浅さ・・・等が含まれており、

つまり簡単にいうと

たいしてアテにならない、ということ。

場合によってはいわゆる「毒親」のように、アテにならないどころか、そのままいけばこの自分をどんどん追い込み、蝕み、あげくは死に追いやるような、そういうことさえもありうる・・・

という事実を、目を見開いて認めるかどうか。

これを私は「がっかりする力」と呼びたいと思う。

 

「第三反抗期」を経て、精神的自立を果たすためには、どうしてもこの「がっかり」に直面する必要がある。

それは「対・親」であっても。

「対・国(政府・マスコミ・大企業)」であっても。

 

がっかりできるのも勇気、認めるのも勇気、それも力なのである。

そこで人は、大人になるのだ。

依るべきものは他ではなく自分だ、ということに肚が定まるのだ。

 

その「がっかり」が怖くて、見たくない考えたくない・・・をずっと続けると、いつまでも際限なく

「上」は正しいはず
良いように考えてくれるはず
守ってくれるはず

という、依存的なマインドに固執することになる。

それゆえに、現実いかなるおかしなことが起こっていても

気がつかない
その矛盾や誤謬を見落とし続ける

・・・ということになる。

これから先の崩壊と再生

しかしこれから先、世の中はますます、今まで確かだと信じられていた「大きなもの」が綻び、瓦解し、嘘がばれ、闇が明るみに出る・・ということが起こってくるだろう。

その時に、信じていた「親なるもの」の確かさが、「そういうわけではなかった」と見ることができるか、認めることができるか。

それが「がっかり力」。

ここに至れた人から、本当に精神的な自立が始まる。

そしてすでに「第三反抗期」的ながっかりプロセスを経て自分の価値観を信じられるようになった人たちと共に、本当に感性が共感できるつながりを作り、別の場所に新たな地平を拓いていく。

戦後の焼け跡に闇市を立てて、たくましく生き延びた人々のように。

戦時にあっても自分の畑を黙々と耕し、ささやかにいのちを分け合っていった優しい人々のように。

たぶん私たちは、そうやって生きていく。

 

絶対的に正しく確実な、神のような親はもういない。

何があっても守ってくれるような親はもういない。

従っていれば安全を確保してくれるような親はもういない。

 

このことを心底腑に落として、大人になること。

それを選ぶか、選ばないか。

それも自分の選択。

 

 

 

 

この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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