1on1もやっているのに・・・職場の「人の問題」が片付かない本当の理由

 

最近、いろいろな場所で、経営者や企業の幹部、人事担当者など、さまざまな会社や現場の方たちの現状を聞く機会が多くありました。

共通して私が感じるのは、「ああ、企業の方たちは今、本当に困っておられるんだなあ」ということです。

それは、以前にはなかったような状況と深刻さで、困っておられる。

 

何に困っているのか。

ズバリ、人です。

人の問題が片付かない。

 

1. 声が上がらない

社員が自発的に動かない。

会議で意見を求めても、誰も口を開かない。

ミスや困りごとが上がってこない。気づいたときには大ごとになっている。

 

2. つながらない

部署同士で「あっちは分かっていない」と言い合う。

隣の人が手一杯でも、誰も「手伝おうか」と言わない。

 

3. すり減っていく

きつい口調で詰め寄るタイプのリーダーに、若手が萎縮している。

一方で、厳しく言えば「ハラスメント」「辞める」と言われる。だから気遣いするリーダーは黙って我慢する。

「言わなきゃいけない」と「言えない」の間で、管理職が板挟みになっている。

メンタル不調者が後を絶たない。

 

4. 人が残らない、育たない

辞めてほしくない人ほど辞めていく。理由が分からない。

残った人に負担が集中して、また人が抜ける。

管理職が育たず、「リーダー不在」が当たり前になる。

 

そして何より、

改善しようと、いろいろ手を打っている。

なのに、変わらない。

 

これ、おそらく今、多くの企業で起きている普遍的な事例ではないかと思います。

 

 

打ち手が「やり方」しかない

売上や業績、数字など、ビジネス面の課題ももちろん大事。そこは十分頑張っていらっしゃいます。

こちらに関しては、効果的な施策を打って実行すれば、結果はついてきたりもする領域です。

 

しかし、本当に悩み深いのは、この「人」問題の方なのです。

人の問題に関しては、そもそもなぜこうなってしまうのかがわからない。

何が足りなくて、どうすれば良いのか、具体的にわからない。

 

その中で、手探り状態で「施策」らしきものを必死に考えてらっしゃる姿が伝わってきます。

もちろん皆さん学んでますから、「心理的安全性」とか「共感・受け止め」の土壌を作ることが大事なのだろう、ということは考えます。

 

そうすると、精一杯考えた施策として

  • 1on1をやろう
  • 朝礼で仲間のよかったことを発表しよう
  • 感謝を伝え合う◯◯カードを作ろう
  • まず一呼吸おいて受け止めよう

などのアイディアを出して、皆にやらせようとしたりするのです。

「今の××さんではなく、共感力のある◯◯さんをリーダーにしよう」など、人事異動でなんとかしようとするケースもあるかもしれません。

 

ここまで企業の皆さんの切実な姿が見えると、心理専門職の私としては、正直非常に歯がゆい思いがします。

わかる、気持ちはわかるけど、そこじゃない。。。

それらはすべて「やり方」の話でしかないからです。

 

考える打ち手は「やり方を足す」か「人を入れ替える」かの2種類だけ。

「受け止めること」すら、ルールや指示でやろうとしている。

 

では、「やり方」でなければなんなのか?

それは「感じ方」。ここを耕すことです。

本当に心からそう感じられるようになる心を育てることです。

 

「おかえりなさい」が言えなかった私

ここで私自身の子どもの頃の話をします。

 

私が子どもの頃、母親は私にこう言いました。

「パパが帰ってきたら、玄関に飛んで行って『おかえりなさい』と言いなさい」

母はどこかのドラマや映画で見たような、パパが帰ってきたと言って大喜びして迎える可愛い娘の姿を思い浮かべ、そうであってほしい、いや、そうであるべきだと思ったのでしょう。

 

しかし、私はとてもそんなことはできませんでした。

そういうことをする心の土壌がないのです。

 

仮に、娘がそれほどパパの帰還を大喜びするという行為が生まれるためには、それ以前に、家族の間で気持ちが行き交っていることが大切です。

気持ちを聞いてもらい、相手の気持ちも聞く。

「そうだね」と共感して、わかってもらえる。あたたかく笑い合える。

そんな積み重ねがあってこそ、「大好きなパパ」という気持ちが子供の側に育ち、それが結果として「パパ、おかえりー!」という喜びの表現につながるのです。

 

我が家の場合、両親とも気持ちの話をまったくしない人でした。

遊んでくれなかったわけではありません。

でも、気持ちを聞いてくれる、自分も気持ちを話す、という回路はなかった。

その回路も土壌もないところで、「玄関に飛んで行ってパパおかえりー!」という喜びの感情表現が生まれるわけもなかったのです。

 

しかし母が「しなさい」というので、私は仕方なく玄関へ出て行ってそれほど笑顔でもなく「おかえり」ととりあえず言いました。

やらされてる感、演技している感は半端なかったです。

ちっともうれしくなかった。モヤモヤするばかりでした。

 

会社での「やらせる施策」もそれと同種といえないでしょうか。

 

「やり方だけ整えればいいんだ」というのは、そういうことです。

こう言えばいい。こうすればいい。

言うだけ、するだけ。それを上から強要されるだけ。

 

そうしたら強要された方は「言えばいいんでしょ」「やっとけばいいんでしょ」となります。

「やらなきゃ」という余計なプレッシャーや、反発が増えていきます。

図らずも「心理的安全」とは逆方向へと向かってしまいます。

 

受容は、受容された体験から生まれる

少し前の時代は、それでも回っていた社会がありました。

形だけでも整っていればOKだった。

それで問題なく回っていた。

誰もその奥の「心」がどうとか言及しなくても、あまり気にしなかった。

 

しかしもう時代のステージが変わっています。

「形だけ」の時代は終わっています。

「中身は、本当は、どうなのよ?」が大事だよね、という認識にどんどん変わっています。

 

受容も共感も、スローガンで掲げるだけではついてこない。

 

受容するためには、受容されるという心の満たされる体験が必要です。

共感できる心は、共感しあえた時の心の温かさを実感する経験が必要です。

 

会社の皆さんに、その体験、実感がありますか?

その体験・実感を引き出されるような機会は作られていますか?

 

生まれてこの方「受容された、共感してもらえた」というあたたかく満たされ、安心できた感覚を味わったことがある人がどれほどいるでしょうか?

社長自身、リーダー自身、人事担当者自身、その心の感覚を知っているでしょうか?

 

本当にその体験と感覚を身体で知っていれば、自ずとチームにそれが広がり、人に伝わり、人の心は丸く元気になっていきます。

 

感覚、体感、実感。

これは「感じる」という体験でしか育たないものです。

 

そして実のところ、人を受容できるためには、まず自分を自己受容している必要があるのです。

そんな自分もこんな自分もあっていい。

できるできないを超えて「存在としてここにいていい」という、存在に対する受容の感覚さえあれば、実は「人」の問題は生じる必要がなくなります。

 

だから、変化の起点は施策ではありません。

まず経営者・リーダー自身が、受け止めてもらう体験をすること。

そして自分自身を受け止めるという体験をすることです。

それこそが、これまでの軌道から踏み出す大きな一歩となります。

 

達成力と受容力

そこで私は、これまでビジネス社会を生き抜いてきた皆さんに、

これまでパワフルに使ってきた、理性と行動で達成する「達成力」に加えて、もう一つの次元・・・感性と存在をそのまま受け止める「受容力」の取り戻しを強く呼びかけたいのです。

 

「受容力」とは感性の力であり、「生命」を大切にする器のことです。

企業社会において、今まで「無用!」と切り捨てられてきたもの。

この「感じる」領域をがっつり落としてきたツケが、冒頭に書いた「人の問題」噴出の根本原因です。

 

理性で考え、行動し、達成・実現する「達成力」はもちろん素晴らしいし必要な力です。

 

でも「達成力オンリー」という偏りが、問題の根源。

「達成力」と「受容力」は2つで1つ。

 

この二つが本来のバランスで働くあり方を、私は「自在軸」と呼んでいます。

それについては、また改めて書きます。

 

企業や経営者の皆さんの切実なお困りに、糸口が見つかり、解決へと導かれるように・・・

微力ながら、その一助となれればと願ってやみません。

 

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この記事を書いた人

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大塚 あやこ

経営者・リーダーの認識変容コンサルタント
ビリーフリセット®創始者
・一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
・ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社 代表取締役

 東京藝術大学作曲科卒業。演奏家・作編曲家として約20年、第一線で活動した後、燃え尽き体験を機に人の内面へと関心が向かい、独自の心理変容メソッド「ビリーフリセット®」を確立。
2014年、小さな勉強会から活動をスタートし、以来12年にわたって働く人の内面変革を支援してきた。

オンライン講座(Udemy)「はじめての傾聴」は受講者31,000人を超える。ほかに「ロジカル派のためのマインドフルネス」等を提供。
近年は支援対象を経営者・リーダーへと絞り込み、内的変革から組織の進化を導く「自在軸経営」を提唱している。

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