心理的安全性とは
ここ数年、会社や組織を運営する人たちの間で、心理的安全性 というキーワードが注目されている。
心理的安全性とは、チームや場の中で、何を言っても
「否定されない、拒絶されない、罰せられない」
「聞いてもらえる、受け止めてもらえる」
と感じられる空気のことである。
それがあればこそ、メンバーが自分の考えを口にできたり、自発的に行動したりできるようになり、結果としてチーム成功の鍵となる・・・
ということが、2012年よりGoogle社で実施された大規模労働改革プロジェクト「プロジェクト・アリストテレス」において発見された、という話が有名だ。
カウンセリングの世界では当たり前
というと、なんだかビジネス界での画期的な発見であり、最先端!?みたいに見えるが
実はこの「心理的安全性」の概念は、心理カウンセリングの世界では大昔から当たり前の前提であって
カウンセラーであれば「イロハのイ」として皆がやっていることである。
まずはクライアントさんの存在そのものを全面肯定し
その方が話すことは、ポジティブもネガティブも、どんなことでも、まずは「そうなんですね」と受け止めて
否定しない、拒絶しない、頭ごなしにアドバイスしない。
いわゆる「傾聴」というスキルも、この前提によって成立するものだ。
カウンセラーがそういう姿勢でいるからこそ、クライアントさんは誰にも言えないような悩みも安心して話すことができるのだし
それゆえに、自分でもわからなかった深い自分自身に向き合い、新たな発見が引き出され、本来の元気を取り戻していくことができる。
カウンセリングとは、そういう対話の原則で成り立っている。
「心理的安全性」にこれだけの注目が集まっているのは
そのような対話の作用が、人と人の関わる場全てにおいて本質的に重要であることが、だんだん認識されているということであり、
それを会社組織の場で実践して理論化したのがGoogle社であるのだろうと思う。
「心理的安全性」を作ろう!では作れない
というわけで
「よし、ウチの会社も心理的安全性を作らないと!ハイ、作りましょうー!みんな、言いたいこと言ってー!」
「勇気を持って、どんなことでも言ってみてねー!」
と号令をかけたとして、心理的安全性は作れるのだろうか?
答えは NO である。
これは「空気」なので、号令や命令では作れないのだ。
少しでも話しやすいような「仕組み」を作れば、ある程度それらしいこともできるようになるかもしれない。
しかし本質的な策にはならないだろう。
なぜならば、心理的安全性のカギとは
「なんでも話しましょう〜」という
話す側への呼びかけにあるのではなく
「どんなことでもジャッジせずに
受け止める」という
聴く側のマインドセットにある
からだ。
この聴く側としてのマインドセットが、リーダー及び場全体に育まれていない限り、心理的安全性が場に醸成されることはない。
ガチで心の問題
しかもこれは「受け止めてる風」を装ったり示したりすることでもない。
「こういう言い方をすると良い」とされた言葉を覚えて、その通り言えるようになればいいわけでもない。
それでは取って付けた「フリ」にしかならない。
フリでは人の心は動かない。
そうではなく、
本当に、どんな人の、どんな言葉でも、態度でも、心から「そうなんだね」と受容・肯定する心になれるかどうか。
そう、本当に、心から。
たとえ相手の発言の内容や、行為そのものが、場にそぐわず、意図したものとは外れていたとしてもなお、
その人の存在に対する畏敬と慈しみを、持ち続けることができるかどうか。
フリや心がけじゃなくて。
本気で。ガチで。
そういう心の柔らかさと、許容の器(うつわ)、ハートの大きさ、もっというならば「愛」を
その場に関わる人みんなが持てるかどうか。
それこそが「心理的安全性」の本質なのである。
ハードル高い・・・よね。
でも、そこまでできる人が、世の中に増えてほしい!
それを私は切に願う。
そうしたらどんなにか、会社が、社会が、世の中が、優しく、イキイキとするだろうか。
まずはリーダーから
では、具体的にどこから手をつけたらよいのだろうか?
それは、リーダー自身が自分に向き合ってみるところから。
リーダーであるあなたが、まず自分自身のことをどれだけ受け入れているだろうか?
ちょっと問いかけてみてほしい。
・自分を嫌っていないか?
・「あってはいけない自分」を隠していないか?
・「こうであらねば」が強すぎていないか?
・そうなれない自分を責めていないか?
・責められるのではないか、見透かされるのではないかと、いつも他人を恐れていないか?
思い当たるフシがあるならば、まずはあなた自身が自分に「安心していない」ということになるのだ。
それはつまり、まず自分自身が「心理的に安全」ではない・・・ということ。
わかりやすく言えば、「自分に余裕がない」というやつだ。
自分自身がその状態だと、残念ながら他人に対して場に対して「心理的安全性」を作ることは難しい・・・ということになってしまう。
あなたの出している「気」が、まわりの「気」を作るからである。
心理の世界では
自分自身にできていないことは、他人にもできない。
自分自身にできることは、他人にもできる。
という法則がある。
他人の気持ちがわからない人は、そもそも自分の気持ちがわからないのだ。
(参考記事)
他人に対して「こういう人は許せない!」とジャッジがどうしてもキツくなってしまう人は、
実は、同じだけ自分自身に対してもジャッジがキツく、そんな自分を許すことができないもの。
それが、回り回って「ものが言いにくいキツい空気」を作っている。
だからこそ、リーダーであるあなたが、自分をどれほど理解し、受容し、自分という存在にOKを出せているか。
どんなネガティブ要素も拒絶せず受容し、「べき・ねば」から軽やかに自由になって、自分の本質を信頼し、恐れから自由であれるか。
つまり「自分が自分でいていい」という余裕。
この在り方があるかどうか。
このことが、他人に対する接し方と、場の空気の醸成に直結しているのである。
場の空気を作るのはリーダーだから
ということはつまり、リーダーのマインドセットさえ変われば、組織や場のマインドセットは比較的簡単に変わるということ。
だから、場に「心理的安全性」をもたらしたいのであれば、まずはリーダー自身が、自分の中で「心理的安全性」を確立することである。
そのためには、自分が自分の心を扱う「心理カウンセリング」の学びと実践がとても有効である。
リーダー自身がある程度まとまった時間をかけて、そのような学びの場に参加して実践を深め、
自己探求・自己理解・自己受容のプロセスを歩むことが、結局のところ最短距離ということになる。
今日やってすぐ変わる!というものではなく、少しじっくりと時間をかける必要があるが、
そうやって辿り着いた自己受容のマインドセットというものは本物であり、決して崩れることがない。
もうそれが新たな自分のナチュラル、つまり自然体になるわけで、
その自然体のままに、組織に、チームに、場に関わることができるようになるだろう。
リーダーが恐れなく自然体でいれば、その場にいるメンバーも共振して自然体でいられる。
リーダーが「受容」の周波数を出していれば、メンバーからも「受容」の周波数が引き出される。
人間とは、言葉を超えたところで、無意識レベルで、互いに共振し合うものだからだ。
その余裕と共振が、一人一人の自由な力を引き出し、全体としてのパフォーマンスを上げていくことになる。
それが、いちばん本質的で永続的な「心理的安全性」の作り方であると、私は考えている。
これまで、「カウンセリング」というフィールドで行われてきた「自己探求・自己理解・自己受容」とは、
言い換えれば、自分の存在力を磨く「心理的トレーニング」のプロセスである。
それはこれからの時代、誰にとっても必須のスキル。
否、もっと言えば、本質的に人と関わって着実に現実を変革していきたい人ほど、必須のスキルとなるだろう。
だからこそ、「心理カウンセリングを学ぶ」という取り組みは
社会で力を発揮して、多くの方たちに影響を与える立場の皆さんや、「現実をよりよくしよう」と願う皆さんにとって
最短、有効、かつ必須の手段であると私は言いたい。
社会人が、ビジネスパーソンが、カウンセリングを学ぶこと。
そうして、自分と人の心理に精通した人になること。
そのことの多大な可能性を、ぜひ思ってみてほしい。
それを絵空事ではなく、現実的に実践していく中長期的なプログラムが
ビリーフリセット・リーダーズ講座(BLC)。
そんな本質志向のリーダーの皆さまの力に、きっとなれる講座です。
2023年、5月から開講。