「助けなきゃ」を手放す

今日はカウンセラーのあり方についてのお話です。
カウンセラーに興味のある方向けのメルマガに書いたところ、けっこうなレスポンスをいただいたので、加筆してブログにしました。
多くの人にとって大事な話だと思います。

私助ける人。あなた助けが必要な人。

さて、カウンセラーやセラピスト等、いわゆる「援助職」といわれる人たちは、一見「人を助ける」お仕事のように見えます。

実際「援助」という字には「助」が入ってますしね。

でも実際仕事をしていくと、自分が「助ける」と思うことがずいぶんおこがましいことであることがわかるようになってきます。

というよりむしろ「助けてあげたい、助けなきゃ」という思いは邪魔であり、クライアントさんのためにならず、どんどん違う方向へいってしまうというリスクがあります。

なぜなら、「助けてあげる、助けなきゃ」という思いは、自分と相手との間に無意識の上下関係を作るからです。

自分は助ける側、問題ない人、大丈夫な人。
この人は助けられる側、問題のある人、弱い人。

無意識にこういう構えになっていると、相手の方の本来の力や、魂としての尊厳を見くびることになります。

それどころか、「自分は大丈夫な人」という側に立つことで、自分自身の弱さや闇や傷から目をそらす、というマインドのトリックにまんまと引っかかるのです。

弱い人、傷ついた人を助けることに奔走していれば、自分のことは見ないで済むからです。

そういう自分を見ないためにこそ「助けなきゃいけない弱い人、傷ついた人」を必要としていないか?

というのが、援助者を志す人が最も越えなければいけない自らのテーマです。

「助けなきゃ」のはじまり

さらにいえば、その「助けなきゃ」という衝動の湧いてくる原点には、自分の親があります。

親のことを「かわいそう、不幸だ」と見て、子供のころから「自分が助けなきゃ」とエンジンを回してきた人生・・・

その延長線上に、援助者としての「助けなきゃ」が回っていることはとても多いです。

それはまだ、自分の「荷物」が片付いていないという状態です。

だからこそ、援助者を志す人は、まず自分と親のテーマ、そして自分自身の弱さや傷に向き合う必要があります。

そうしてニュートラルに自分と他人のことを見られるようになった時、押し付けることもなく、深刻になることもなく、相手が助けを求めてきた時だけ、自分が提供できることを無理なく提供して、何か一役、つとめることができるのです。

体験する自由を尊重する

なぜ、相手が助けを求めてきた時だけでよいのかといったら、たとえ相手が今現在苦しんでいる(ようにみえる)としても、その相手にも、それを体験する自由と権利があるからです。

人の人生、何が最善かは、その本人にしかわかりません。
ご本人にとっては、今その時は、その苦しみを味わう体験が必要だということだってあるのです。

それを味わうからこそ、知りたいこと、学びたいこと、突破したいことがあるのかもしれないじゃないですか。
そんなことは、他人である私たちには計り知れないことですし、むやみにそこに侵入することは、そのプロセスを邪魔することにもなりかねません。

そこにはきっと、個々の「魂の所以(ゆえん)と理由」があり、それゆえの今のその方の体験があるのだと私は思っているので、ご本人の自由なのです。

「大丈夫!」と、その方自身の魂の意向と、力を信じることです。

しかし、だからこそ、そういう方が思い切って助けを求めてきたなら、それは受け止めるべき時。

できることがあるなら、してさしあげればよいでしょう。

結果として相手の方が助かったり、その方も「助けられた、ありがとう」と言ってくださることはあるでしょう。

しかし、その時には、自分の満足や手柄にすることなく、あっさりと
「へえ、よかったね!」
と喜んで、あとは忘れる・・・

そういうあり方が理想だなあ、と私は思うのです。

お釈迦様の言葉にこんなのがあります。

”施して喜び、施した自分と、施しを受けた人と、施した物と、この三つをともに忘れるのが最上の施しである。”

私のとても好きな言葉です。

 

この記事を書いた人

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大塚 あやこ

心理カウンセラー/講師/音楽家
一般社団法人ビリーフリセット協会 代表理事
ビリーフリセット・クリエーションズ株式会社代表取締役
 
東京芸大作曲科卒。演奏家・作編曲家として20年間第一線で活動後、燃え尽き体験をきっかけに人生の転機を経て心理カウンセラーに転身。
悩みの根本原因に素早くアクセスする独自メソッド「ビリーフリセット®」を確立。個人相談から企業研修まで幅広く展開し、協会認定カウンセラーを多数輩出。Udemyオンライン講座「はじめての傾聴」は2万名超の受講者を誇る常時ベストセラー。 心の構造を論理的にモデル化する独自アプローチが、ビジネスパーソンから高い支持を得ている。

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