現代人は普段から、視覚&思考ばかり使って暮らしています。
それゆえに、ピアノの練習でも自然にそうなってしまって
はからずも練習というものが 「鍵盤というスイッチを順番通りに押す練習」になってしまったりします。
これだと、頭脳がフル回転しているわりには、自分が実は何の音楽をやっているのかサッパリわかってない・・・ という、なんだか残念な状態になってしまいがち。
視覚&思考から、聴覚&体感へ
ですから楽器の練習は、あえて視覚&思考を少し抑えて、 聴覚と体感に重心を置くようにしてみるのがおすすめです。
つまり簡単にいうと、
「目で見て、頭で覚える」のではなく
「耳で聴いて、手の幅や指の運動感覚で覚える」
ということです。
もちろん、最初に楽譜を見るという「目」は必要。
でも、最初に目で確認したら、次はもう目に頼らず、 聴こえてくる音を味わう。
「あー、この高さ、この響き、こういう音なんだー」と。
そして、聴こえてくる音を、自分が歌えるようにする。
音符1個を頭で覚えるのではなく、音符の連なりによる「フレーズ」「メロディー」として。
そのフレーズを音にするための「手の動き方」を、手で感じる。
目を使わずに。
楽器の練習はスポーツみたいなもの
手・指の動きを、手自身が、運動として感じる。
「あー、この幅で指が広がってる。この順番でこの指が動くんだな。 ここでこっちにずらし、ここは同じところに留まるんだな。」と。
それを確認するのは「耳」です。
手がこの動きをすると、耳にはこんな音が聴こえる。
耳にこういう音が聴こえるときは、手がこんなふうに動いている。
手の感覚と耳の感覚をすり合わせていく。
その間、目はつぶるか、なんとなくボーッと見ているくらいでいいでしょう。
そしてその動きを、なんども繰り返して「手が」覚えること。
頭ではなく。
頭のコントロールを離れたところで、身体が勝手に動くところまでいって 、やっと「弾ける」ということになるのです。
スポーツと一緒です。
頭が考える前に身体が動く。
そこを目指すのです。
身体は覚えるのに時間がかかるので、何度もやってあげないと覚えませんが、一度覚えたらあとは自動でやってくれるので、結果として楽ができます。
脱「スイッチ押し練習」で音楽を楽しもう
音楽の場合、そうやって身体を動かしているあいだに、耳も何度もそれを聴くことになります。
そうやって耳も覚える。
耳で確かめ、耳で覚える。
耳で覚えたことは、身体に入って歌えるようになります。
歌えるようになるということは、自分の中に「音楽が入ってきた」ということ。
自分の中に入ってきた音楽を、手が表現するのです。
そうやって、聴覚と体感をいっぱい使って練習したところは、考えなくても楽に弾けるようになっているはずです。
結果として、視覚&思考で「スイッチ押しの指令を出す回路」を 速く回す練習をするよりも、体感覚として長く記憶に残り、
しかも、自分で弾いた音を自分で楽しむ・・・という、もともと欲しかったはずの音楽の喜びを、味わうことができるはずです。
☆旧ブログ「大人の音楽レッスン」より
2013年に書いた記事を加筆修正しました。
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