
今日はちょっとミュージシャン時代の思い出話をしたいと思う。
作曲家の仕事で「コンペ」という方式がある。
コンペ、つまりコンペティション。
一つの案件について複数の作家からデモ作品を募り、その中の1曲だけが採用となり、その他は全滅。
もちろん報酬が発生するのは採用曲のみで、不採用なら、かけた手間も時間も経費も報われることはないという過酷なシステム。
今はどうなのか知らないけれど、私がやっていた当時は、ご縁の音楽事務所からそういったコンペ案件に声をかけてもらってチャレンジすることもしばしばあった。
私は歌物作家ではなく、インスト/サントラ系なので、いただくお話はドラマやアニメのサントラ、ドキュメンタリー番組のテーマ曲といった系統だ。
お話をいただけるのはありがたく、もちろん私も全力で頑張って曲を作る。

しかし私の場合、このコンペという形式で勝てたことがほぼないのだ。
いや、ほぼじゃないかな、コンペに関しては全敗かも。
どれだけ精一杯作って「これなら!」と自信を持って出した曲も、結局「今回残念ながら」の通知が来る。
こんなことが何度もあった。
私の勝手な推論だが、コンペで勝てるのは一にも二にも「インパクト」だ。
で、私自身はどう頑張ってもその「インパクト」とやらが出せないのだ。
これは当時の音楽業界において致命的な弱点だった。(と当時の私は思っていた)

そういうわけで、コンペについては惨敗としか言いようがない苦い思い出しかないのだが、
音楽業界から離れて約10年、カウンセラーとしての活動にすっかりシフトした頃、ふと思いついたのだ。
あんなに頑張った曲が、何の成果もないまま多数お蔵入りになってるって悔しいわ!もったいないわ!
よ〜し、小銭でもいいから売ってしまえ!
というわけで、コンペでボツになった曲をはじめとして、イベント用の曲、映像用の曲、劇伴曲などなど、
使用済みでオクラになっている曲を引っ張り出して、Audiostockという著作権フリーの販売サイトに出したのだった。
出してみたらありがたいことに、いろんな曲がポツポツとお気に入り登録され、ポツポツと売れている。
その中でも人気No.1は、「歴史絵巻」というタイトルの、大河ドラマのオープニングのような和風テイスト、オーケストラ壮大系。
この曲ができたのは、忘れもしない、燃え尽き真っ最中の頃だった。

私が音楽で燃え尽きてジタバタした末に、心理カウンセラーに転向したストーリーはご存じの方も多いかもしれない。
しかしそこはもちろん、パッキリと切り替わったわけじゃない。
どうするんだどうするんだとジタバタしながら、もちろん再起を望んで頑張ったことだってあった。
その中で徐々に新しい方向へ舵を切っていったわけなのだが、あれはそんな燃え尽き時代も最後の方だったかもしれない。
テレビの紀行番組のテーマ曲として、コンペの話がやってきたのだ。
私としては、この件はぜひやりたかった。すごく好きな方向性だったし、自分の個性を活かせると思った。
あわよくばこれで「作曲家・大塚」の復活が成るのではとさえ思った。
だからめちゃくちゃ気合い入れて作ったのだ。
NHKの大河ドラマのオープニングをイメージして、和楽器を取り入れ、短い時間内に剛柔とり混ぜたドラマを凝縮させる構成にした。
オーケストラは打ち込み(コンピュータによるプログラミング)だけど、生っぽさを出すために友人のヴァイオリニストに主旋律を弾いてもらって録音ミックスした。
グッと生オケっぽくなった。
女性のオペラ風ヴォイスが欲しかったので、友人の声楽家に頼んで歌ってもらった。
グッとドラマティックになった。

どや!これで文句ないやろ!!
ぐらいの気合いで提出して待つこと何日だったか。
「最終選考2曲に残りました!」
との連絡が。
うおー、これはいけるか!?
いけー!決まるのだー!
お願い。頼みますっ。
さて。結果として。
落ちました。
もう1曲に決まったそうでした。
あー、自分
やっぱり作曲家、もう違うってことかな。

覚えてないけど、そこから先、人生の軌道はどんどん変わっていった。
そんな昔もありました。
という、とても思いのこもった曲。
おかげさまで今、私のAudiostockの中では一番人気をいただいている。
コンスタントにお気に入り登録され、知らないうちに少しずつ購入されている。
静かな蓄積ではあるけれど、あの時の熱量は伝わってるんだなあ、と報われた気がしている。
あの時、そしてその後何年も、
もう終わった話だと思っていた。
でも終わっていなかったのだ。
私が終わらせなかったから、
終わりにならなかった。
自分の過去を捨てずに、
しぶとく執着して(笑)良かったと
今は思っている。
あの曲に価値がなかったのではなく
私に価値がなかったのでもない。
そのことを、今の私は
受け取れるようになったのだと思う。
よかったら聞いてみてください。
著作権フリーで誰でも使えるので、必要な時はお使いくださいね。




