
「なんでそんなこともできないのか」
「何度も言っているのに、なぜわからないのか」
リーダーの方の、このイライラ本当によくお聞きします。
無理もありません。
経営者やリーダーになる方は、たいてい「できてきた人」ですから。
教える現場で、思い知ったこと
私は音楽学校で10年以上、ピアノやアレンジを教えてきました。
そのあと、カウンセラー養成講座を10年。
長く「教える」ということをやってきたわけですが、そこで思い知ったことがあります。
人は、本当にわからないし、できない。
しかも、こちらが思いもよらないところで、です。
「え、そこがわからないの?」
「そこが飲み込めないの?」
「そこができないの?」
自分にとっては意外なほどの場所で止まっている。
考えてみれば、当たり前なのです。
私は「A」という回路でうまくできた。
だから「A」でやればいいよ、「A」のようにやってごらん、と言う。
でも、どうしても「A」ではできない人がいます。
その人は「B」という回路なら、わかるかもしれない。
「C」なら飲み込めるかもしれない。
回路が、違うのです。
これは実感しないと、なかなかわからないことでした。

「教え上手な先生」はここが違う
教えるのがうまくない先生は、生徒が弾くたびに
「違う、そうじゃなくてこうよ」
「なんでそうできないのよ」
「いや、違う!こうやって!」
と、そればかり言っています。
うまい先生は、違います。
できないのなら、どこが要因でできていないのか。
何のせいで、そこが詰まっているのか。
まず、そこを洞察します。
つまり、生徒の状態を「受け取る」(キャッチする)ということが先に起きているのです。
そこで、指の動かし方だと気づけば「この指を、こうしてごらん」と言う。
頭の中で「ドレミ、ドレミ」と考えすぎて弾けないのだな・・と見立てたら
「ちょっと、ララララ…と歌ってごらん」と言ったりする。
すると、頭ではなく感性でメロディをつかまえて、スッと弾けてしまったりするのです。

「どこで」「なぜ」を洞察できるか
長年教えてきて思うのは、一番大事なのは、
その人が「どこで」「なぜ」できなくなっているのか
という原因の洞察だ、ということです。
これは、ご本人に聞いてもわかりません。
ご本人は、なぜだかわからないまま必死になっているのですから。
だから「なんでできないんだ!?」というのは相手を余計に追い詰めるだけです。
問いのようで、実は問いにさえなっていません。
自分の苛立ちをぶつけているだけ・・・
「ああ、今ここがこうなっているな」と相手を受け取り、
「これのせいでできていなかったんだね」と見抜く。
それをするのが教える側の役割なわけです。
人が伸びていく指導とは
まとめると、三つ。
一つ、
人はそれぞれ、理解できる回路が違う。
認識の道筋が違う。感覚が違う。
二つ、
その人が今そうであることには、必ず要因がある。
三つ、
それを受け取り、見抜いて、その人の回路に沿って外してあげられるか。
これが、人が伸びていくための適切な指導ではないかと思っています。

現場でこう考えてみよう
お仕事の現場に置き換えてみると、
「なんでできないんだ」と苛立ってしまうあの方は、
どういう回路で、物事を理解する人なのでしょうか。
言ったらわかる。
言ったんだから、やるだろう。
そんな前提のまま、やり方だけを渡していないでしょうか。
何のために、何を目指して、今そのやり方が必要なのか。
そのためには、どこから手をつけるといいのか。
それを、見せてあげられているかどうか。
相手はそれで理解できているのだろうか・・・
その方の内側は、今どういう状況になっているのだろうか・・・
まるで耳を澄ますように受け取ってみるのも、意外とありかもしれません。
「そんな面倒なこと、やってられるか」
——そう思われるかもしれません。
でも、面倒がって「こうしろ、ああしろ」で終わらせて、
結局できていなくて、また苛立って。
そんな不毛なループを回り続けるより、案外、近道だったりしませんでしょうか。

「なんでわからないんだ」が変わるとき
あくまで今日は、私の経験からのヒントです。
「なんでわからないんだ」が
「この人は、どこで詰まっているんだろう」
に変わったとき、
見えている景色は、少し変わっているかもしれません。
部下の「できない」に戸惑う話をもう一つ。
イライラの正体を掘り下げたのはこちらです。
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